2026年8月5日 水曜日
パーソナリティ: 玉置妙憂さん
回答者: 高橋龍太郎先生(精神科医)

こんにちは、悟(さとる)です。
本日はテレフォン人生相談から、「不妊治療を続けても妊娠できず、優しい夫を父親にしてあげられないことがつらい」というお悩みです。
相談者は34歳の女性、38歳の夫とふたり暮らしをしています。
長く不妊治療を続けてきたものの、医師からは「かなり難しい」と告げられ、体外受精で得られた受精卵も育たず、ゼロという結果が続いている状況です。
周囲には妊娠・出産の報告があふれ、職場や友人、親族の「おめでとう」という空気の中で、自分だけが取り残されているような感覚に襲われています。
優しい夫や両親の期待を感じるほど、「ごめんなさい」という気持ちが強くなり、治療に向かう足も重くなっている――そんな心の揺れが、相談の中心にありました。
■相談内容の概要と女性が抱えている苦しみ
相談者は、約1年前から本格的に不妊治療に取り組んできました。
検査や治療を重ねた結果、医師からは「かなり難しい」という厳しい見立てが伝えられています。
体外受精を行っても、受精卵が育たず、検査のたびに「ゼロ」という結果を突きつけられる日々が続いていました。
その過程で、医師からは「相性が悪い」「体外受精をしても意味がないかもしれない」といったニュアンスの説明もあり、相談者は自分の身体が原因であることを強く意識するようになります。
「私のせいで、夫を父親にしてあげられない」「両親に孫を見せてあげられない」という思いが積み重なり、治療の場に向かうたびに、申し訳なさと自己否定が胸の中で大きくなっていきました。
一方で、夫はとても優しく、「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」「ふたりでも全然いいじゃないか」と、相談者を支え続けています。
夫の言葉は温かく、責めるような態度は一切ありません。
それでも相談者の心の中では、「こんなに優しい人を父親にしてあげられない自分」が責め立てられ、罪悪感が消えない状態になっていました。
■周囲の妊娠・出産報告が心を追い詰める構図
相談者の苦しみを深めているのは、不妊治療そのものだけではありません。
職場や友人、親族など、身の回りの人たちから届く「妊娠しました」「結婚しました」「子どもが生まれました」という報告が、日常的に目や耳に入ってくる状況も大きな要因になっています。
お祝いムードの中で、自分だけが「現実に引き戻される」ような感覚を覚え、逃げ場がないと感じてしまうこともあると話していました。
同世代の人たちが次々と家庭を築き、子どもを育てている姿を見ると、「どうして自分だけうまくいかないのか」「何がいけないのか」と、自分を責める思考が止まらなくなります。
さらに、両親の期待も相談者の心に重くのしかかっています。
孫を楽しみにしている様子が伝わってくるほど、「ごめんなさい」という気持ちが強まり、顔を合わせること自体が負担になる瞬間もあるようでした。
夫の両親に対しても、「孫を見せてあげたい」という思いがありながら、それが叶えられない現実が、相談者の中で「申し訳なさ」として積み重なっていきます。
このように、相談者の苦しみは、単に「妊娠できない」という事実だけでなく、周囲の期待や社会的な空気、自分自身の理想像が絡み合って生まれているものでした。
■不妊治療の現状と医師から伝えられた厳しい見立て
相談者は、医師から「かなり難しい」という診断を受けています。
検査の結果、受精卵が育たないことが繰り返され、体外受精を行っても着床に至らない状況が続いていました。
医師は、「一度の治療ではわからない部分もあるが、現状では可能性は高くない」といった説明をしており、さらに「体外受精を続けても意味がないかもしれない」という厳しい言葉もあったようです。
そのため、相談者は「頑張れば何とかなる」という希望を持ちにくくなり、「頑張っても結果が出ないなら、どうしたらいいのか」という迷いの中に立ちすくんでいました。
治療を続けるべきか、区切りをつけるべきか、自分の中で答えが出せないまま、時間だけが過ぎていく感覚があると語っています。
一方で、医師からは「また来てください」とも言われており、完全に治療の可能性が閉ざされたわけではありません。
この「可能性はゼロではないが、非常に低い」という中途半端な状況が、相談者の心をさらに揺らしていました。
治療を続けるにしても、やめるにしても、どちらにも痛みが伴う――その板挟みの中で、相談者は「どう向き合えばいいのか」を高橋龍太郎先生に問いかけたのです。
■高橋龍太郎先生の助言:まず「子どもが欲しい理由」を静かに見つめる

高橋龍太郎先生は、相談者の話を丁寧に聞いたうえで、感情の整理から始めるような助言をされました。
ポイントのひとつは、「なぜ自分は子どもが欲しいのか」を、周囲の期待とは切り離して考えてみることです。
先生は、両親の期待や世間の空気、同世代のライフステージなど、外側からの圧力が相談者の心を大きく揺らしていることを踏まえたうえで、「自分自身の気持ち」と「周囲の期待」を分けて考える重要性を示しました。
子どもが欲しい理由を、自分の言葉で静かに言い直してみることが、今後の選択を考えるうえでの出発点になるという視点です。
相談者は、「優しい夫を父親にしてあげたい」「両親に孫を見せてあげたい」という思いを何度も口にしていました。
先生は、その気持ちを否定することなく受け止めつつ、「それは自分の人生の中心に据えるべき理由なのか」「自分自身の幸せとどう結びついているのか」を、少し距離を置いて見つめてみることを提案したと考えられます。
また、先生は、治療そのものについても、「頑張るかどうか」を白黒で決めるのではなく、「自分の心と身体が耐えられる範囲で続ける」という考え方を示したと解釈できます。
治療を続けるかどうかは、可能性の高さだけでなく、相談者自身の心身の負担と、夫婦としての生活の質を含めて考えるべきだという視点が示されていました。
■夫婦関係を守るために大切な「ふたりの軸」
相談の中で印象的だったのは、夫の優しさと理解の深さです。
夫は、「ふたりでも全然いい」「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と、相談者を責めることなく支え続けています。
それでも相談者は、「こんなに優しい人を父親にしてあげられない自分」を責めてしまい、夫の言葉を素直に受け取れない状態になっていました。
高橋龍太郎先生の助言の背景には、「夫婦の軸をどこに置くか」というテーマがあるように感じられます。
子どもがいるかいないかは、夫婦の人生にとって大きな要素ではありますが、それだけがすべてではありません。
夫婦としての関係性、日々の暮らしの安心感、お互いを思いやる気持ちなど、すでにあるものを見つめ直すことも、心を守るうえで重要です。
相談者が「ごめんなさい」と感じているのは、夫の優しさに対して「応えられていない」と思ってしまうからでもあります。
しかし、夫はすでに「ふたりでもいい」と言葉にしており、その中には「あなたと一緒にいること自体が大切だ」というメッセージが含まれていると考えられます。
この夫の言葉を、少しずつでもそのまま受け取っていくことが、相談者の罪悪感を和らげる一歩になるでしょう。
また、両親や義両親に対しても、「孫を見せてあげたい」という気持ちは尊いものですが、それが自分を追い詰めるほど強くなっている場合には、距離の取り方を工夫することも必要です。
夫婦としての軸を「ふたりの生活」「ふたりの心の安定」に置き直すことで、周囲の期待に振り回されすぎない状態を目指すことができます。
■不妊治療との向き合い方:頑張り方を自分で選ぶという視点
相談者は、「頑張りたいけれど、どう頑張ればいいのかわからない」「頑張っても結果が出ないなら、頑張る意味があるのか」と迷っていました。
高橋龍太郎先生の助言は、「頑張るか頑張らないか」という二択ではなく、「どの程度、どのように頑張るかを自分で選ぶ」という視点を示しているように感じられます。
治療を続ける場合でも、すべてを全力でやり続ける必要はありません。
医師と相談しながら、身体的・精神的な負担を考慮し、ペースを調整することも選択肢のひとつです。
一方で、一定のところで「ここまで」と区切りをつけることも、決して逃げではなく、自分の人生を守るための選択になり得ます。
重要なのは、「誰かの期待に応えるためだけに治療を続ける」のではなく、「自分が納得できる形で治療と向き合う」ことです。
そのためには、夫と率直に気持ちを話し合い、「ふたりとしてどうしたいか」を共有する時間を持つことが欠かせません。
夫がすでに「ふたりでもいい」と言っているのであれば、その言葉を土台に、治療の続け方や区切りのつけ方を一緒に考えていくことができるはずです。
■まとめ:罪悪感ではなく、自分の人生を静かに選び取る
今回の相談から浮かび上がるテーマは、「不妊治療と夫婦関係」「周囲の期待と自分の気持ち」「罪悪感との付き合い方」です。
妊娠できない現実は、誰にとっても重いものですし、「自分のせいだ」と感じてしまうのも自然な反応だと思います。
しかし、そこで自分を責め続けてしまうと、治療だけでなく、夫婦としての生活そのものが苦しくなってしまいます。
高橋龍太郎先生の助言は、感情を否定するのではなく、「なぜ子どもが欲しいのか」「自分は何を大切にしたいのか」を静かに見つめ直す方向に、相談者の視線を少しずつ導いているように感じられました。
不妊治療を続けるかどうかも含めて、自分の人生をどう選び取るかは、周囲の期待ではなく、自分とパートナーの対話の中で決めてよいのだということが、この相談から伝わってきます。
今回の相談を通じて、「優しさに応えられない」と感じている人が、少しでも自分を責める力を弱めていけたらいいなと思いました。
夫婦の形はひとつではなく、子どもがいてもいなくても、ふたりで築く時間には確かな価値があります。
この記事を読んでいるあなたが、もし同じような悩みを抱えているなら、「頑張るかどうか」だけでなく、「どう頑張るか」「どこまで頑張るか」を、自分の言葉で決めてよいのだと、心の片隅に置いていただければうれしいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。
その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。
もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。
どれが正しいということはありません。
今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。
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どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。
またゆっくりとお会いできますように。
── 悟(さとる)


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