2025年12月30日 火曜日
パーソナリティ:今井通子
回答者:三石由起子(三石メソード主宰、作家・翻訳家)

こんにちは、悟(さとる)です。
本日はテレフォン人生相談から、15年もの長きにわたって別居を続けている夫から、急な手術説明への立ち会いを求められ困惑している女性のご相談です。
人生には、法的なつながりはあっても、心の糸が完全に切れてしまっている関係があります。
かつての傷が癒えぬまま、一方的な依頼に翻弄されるとき、私たちはどのように自分自身の心を守ればよいのでしょうか。
静かにその背景を見つめていきたいと思います。
■15年の空白を埋めることのできない深い心の溝
今回の相談者は70歳になる女性です。
現在、36歳の独身の次男と同居しており、他にも結婚して独立した長女と長男がいます。
家族という形は保たれているように見えますが、中心にあるべき夫婦の関係は、15年前から完全に止まったままになっていました。
別居の始まりは、夫の単身赴任というごく一般的な出来事でした。
しかし、その生活が続くうちに夫から、もう自宅へは帰らないという通告がなされます。
夫はそのまま自分の実家へと入り、そこから夫婦の道は大きく分かれることとなりました。
単なる物理的な距離だけでなく、相談者の心を深く傷つけたのは、共に暮らしていた頃から続いていた夫の暴言でした。
その過酷な言葉の暴力によって、相談者はパニック障害を患うまで追い詰められてしまいます。
今でも夫の声を聞くだけで心臓が激しく動悸を打ち、パニックの予感に震えるほど、その傷跡は深く刻まれているのです。
そんな夫から、約一ヶ月後に控えた手術の説明を聞きに病院へ来てほしいという電話が入りました。
病名は腰部脊柱管狭窄症であり、命に関わるような緊急事態ではありません。
しかし夫は、隣の敷地に住んでいる実の弟に頼むわけでもなく、長年放置し続けてきた妻である相談者を呼び寄せようとしています。
相談者の自宅から夫が入院する病院までは、電車を乗り継いで片道5時間もかかります。
一人での長距離移動はパニック障害を抱える身にはあまりに過酷であり、何よりも、あれほど自分を苦しめた相手のために、なぜ今更尽くさなければならないのかという強い拒絶感が、彼女の胸を締め付けていました。
■責任感という呪縛と生活費を払わない夫の勝手
夫は15年もの間、生活費を一切入れてきませんでした。
相談者が離婚を切り出したこともありましたが、夫はそれを頑なに拒否し続け、さらには「裁判をしてもお金は出さない」と開き直る始末でした。
結局、相談者はこの人と争うエネルギーを失い、精神的な平穏を守るために、次男と二人で慎ましく暮らす道を選んだのです。
戸籍上は夫婦のままであり、法事や冠婚葬祭などの最低限の付き合いはこなしてきました。
しかし、それはあくまで社会的な体裁を守るためであり、愛情の欠片も残っていないことは明らかです。夫は自分の都合が良いときだけ、妻という立場を利用しようとしています。
電話口で夫から「病院に来てほしい」と言われた際、相談者は咄嗟に、一人での移動には不安があることや、過呼吸になる恐れがあることを伝えました。
しかし、夫は彼女の体調を思いやるどころか、電車は混んでいないから大丈夫だ、よく考えておいてくれと、一方的に電話を切ってしまったのです。
相談者は、自分の正直な気持ちとしては一歩も動きたくないと思っています。
しかし、世間一般の「妻としての義務」という言葉が、彼女の足を重くさせていました。
15年間の別居と生活費の不払いを考えれば妻としての義務を果たす必要はないと判断するのが妥当です。
もし、この依頼を断ってしまったら、また夫からどのような暴言を浴びせられるかわからないという恐怖もあります。
夫の影に怯えながら、それでも自分の心を守りたいと願う彼女の葛藤は、多くの人が抱える「情」と「理」の狭間にある苦しみそのものでした。
今井通子さんも、そのあまりに長い別居期間と、夫の無責任な態度に、困惑を隠せない様子で話を聴いておられました。
■三石由起子先生が説く自分を守るための知恵

回答者の三石由起子先生は、まず相談者が抱えている「行きたくない」という感情を、全面的に肯定することから始めました。
そして、その感情を無理に押し殺して病院へ行く必要は全くないと、力強く断言されたのです。
三石先生のアドバイスで最も印象的だったのは、相手を説得しようとするのではなく、自分を守るための「いなし方」を伝授された点です。
夫のようなタイプに対しては正直な気持ちをぶつけるよりも医者の判断という外壁を利用して断るのが賢明です。
具体的には、かつてパニック障害を患った際の主治医などに相談し、5時間の長旅は再発の危険があるため許可できない、という事実上の「ドクターストップ」という形を取ることを勧めました。
夫に「嫌だから行かない」と言えば、また暴言で返されるだけです。しかし、医学的な理由であれば、夫もそれ以上は強く言えなくなります。
また、同居している次男の存在を上手に使うことも重要だと説かれました。
次男は母親がどれほど父親に苦しめられてきたかを見ています。
次男から「お袋は体調が悪いから行かせられない。もし何かあれば弟さん(叔父)に頼んでくれ」と、きっぱりと伝えてもらうことで、相談者自身が直接対峙するストレスを軽減できるのです。
三石先生は、この15年間の夫の仕打ちは、妻としての権利を放棄させるに十分な理由になると指摘されました。
生活費も払わず、離婚も受け入れず、自分勝手に生きてきた夫に対し、今更「妻」としての役割を完璧に演じる必要はありません。
相談者の心の中にある「不真面目であってはいけない」という真面目すぎる性格が、自分を苦しめているのだと優しく諭されました。
病院側も、妻が来られないのであれば、近隣に住む親族である弟に説明をするのが通例です。
夫がわざわざ遠方の妻を呼ぼうとするのは、単なる甘えであり、支配欲の表れに過ぎません。
自分の心と体を守るために戦略的な嘘を交えて拒絶することは正当な自己防衛といえます。
■まとめ:自分を最優先にすることで開ける新しい未来
今回の相談を通じて浮き彫りになったのは、長年積み重なった精神的苦苦痛がいかに深く、そして「家族」という枠組みがいかに時に人を縛り付けるかという現実でした。
夫婦であれば助け合うのが当たり前という正論は、双方が敬意を払っている関係においてのみ成り立つものです。一方的に踏みにじられてきた側が、さらにその身を捧げる必要はないのです。
三石先生の示された「いなしの技術」は、決して不誠実なものではありません。
それは、まともにぶつかれば砕けてしまう心の持ち主が、穏やかな日々を守るために手に入れるべき楯のようなものです。
嘘をつくことに罪悪感を覚える必要はなく、その嘘こそが、自分と今の生活を支えるための慈悲の心であるとも言えるでしょう。
私たちは、時に「良い人」でいようとするあまり、自分を一番後回しにしてしまいます。
しかし、自分の健康と平穏が保たれていなければ、誰かを支えることも、自分らしく生きることもできません。
相談者が、夫の声に怯える日々から解放され、次男との穏やかな時間を大切に守っていくことを、心から願っております。
最後に、私、悟の考えを少しだけ添えさせていただきます。
70歳という節目にありながら、15年前の傷に今なお苦しむお姿に、言葉の暴力がいかに一生を左右する重いものであるかを再確認させられました。
相手を変えることはできませんが、相手との関わり方を「仕組み」で遮断することは可能です。
今回の知恵が、彼女にとっての新しい人生の静寂を取り戻す一歩になることを信じています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。
その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。
もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。
どれが正しいということはありません。
今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。
◆ テレフォン人生相談に相談してみたい方へ
寄り添って話を聴いてもらいたいとき、人生経験の深い回答者の言葉に触れたいとき──。
テレフォン人生相談は、長い歴史の中で多くの方の迷いを受け止めてきた、信頼ある相談先です。
番組という特性上、相談内容が“広く届けられる形”になることもありますが、その分だけ、そこで得られる言葉には力があります。
◆ 誰にも知られず、静かに心を整えたいあなたへ
公式の場に踏み出すには少し勇気がいる、あるいは「もっと個別の、自分だけの気持ちをゆっくり聴いてほしい」と感じることもあるでしょう。
このブログでは、そうした気持ちを抱えたままの方でも選べる、国家資格を持つプロのカウンセラーにそっと心を預けられる場所もご紹介しています。
無理に利用する必要はありません。ただ、自分に合う距離感で「心を整える選択肢」が他にもあるということを、必要になったときに思い出していただければ十分です。
どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。
またゆっくりとお会いできますように。
── 悟(さとる)

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