勝手に住民票を移した甥…督促状に怯える80歳女性へ弁護士の線引き

甥が住民票を移したことで督促状に悩み不安な表情を浮かべる高齢女性のイラスト

テレフォン人生相談 2025年11月11日 火曜日
パーソナリティ:今井通子
回答者:坂井眞(弁護士)


こんにちは、悟(さとる)です。

本日はテレフォン人生相談から、血のつながらない甥が勝手に住所を移し、督促状が届くようになった80歳女性の不安です。


郵便受けに知らない名義の封筒が増えていくと、胸の奥がじわじわ冷えていきます。

しかも、不在の時にその甥が取りに来る気配がある。

穏やかな暮らしの中に、針のような緊張が刺さり続けるのです。


怖いのは「いま」だけではありません。

もし自分が先に亡くなったら、この後始末を家族が背負うのではないか。

そんな想像が夜を長くします。けれど、想像は事実と混ざると大きくなります。

坂井眞弁護士の言葉は、その混ざり合いを静かにほどいていきました。


■家はにぎやか、それでも心が落ち着かない理由

相談者は80歳の女性です。

夫は6年前に亡くなり、現在は長男夫婦と孫3人と同居しています。

6人暮らしで、本人も「とても楽しい」と話していました。

家の中には笑い声があり、日々の生活そのものは恵まれているように見えます。


それでも心が落ち着かないのは、家の外から持ち込まれた不安が、生活の中心に入り込んできたからです。

血のつながらない甥が、2年前にふらりと訪ねてきて、荷物を置いていきました。

甥は55歳で、住まいが定まらず、車中泊で生活しているらしい。

荷物が家の中に残っただけでも気がかりなのに、さらに問題を大きくしたのが「住所」でした。

甥がいつの間にか、相談者の家の住所を自分の住所にしてしまったのです

■届くのは手紙ではなく、督促状という重さ

住所が使われるようになると、郵便物が届きます。

最初は手紙程度だったのかもしれませんが、やがて督促状が増えていったといいます。

封筒には差出人の名前、印刷された文字、そして急かすような雰囲気がにじみます。


相談者がさらに不安になったのは、本人がいない時に甥が郵便物を取りに来るような動きがあることでした。

家の中の人間関係がどうこうという話ではありません。

外側から来るものが、家庭の安心を削っていく感覚です。

しかも相手は親戚であり、完全に他人のように切り離せない。心の逃げ場が狭くなっていきます。

■いちばんの恐れは「私の死後、家族に責任が移るのでは」

相談者の核心の悩みは、甥が亡くなった時など「もしもの時」に何が起きるのかという点でした。

自分が先に亡くなったら、息子や孫が面倒を見ることになるのではないか。

住所が自宅になっている以上、最後の通知や手続きが家に来て、家族が関わらざるを得なくなるのではないか。


さらに、甥がブラックリストに載っているらしいという話も出ます。

そうなると、「借金があるのでは」「督促状が多いのは、そのせいでは」と想像が加速します。

高齢になるほど、手続きや法律の仕組みは遠く感じられます。

分からないところに恐れが入り込み、恐れが確信のように育ってしまうのです。

■坂井眞弁護士が最初に示した結論は「心配しなくていい」

ここで坂井弁護士は、相談者の不安に結論から応えました。

甥の住民票の住所がこの家になっているからといって、息子が甥の借金を負うことにはならない、という趣旨です


大切なのは、住所と責任は別だという点でした。

督促状が家に届くと、自分が何かを背負わされる気がします。

しかし、借金の返済義務は本人のものであり、家族が当然に肩代わりするものではありません。

保証人になっている、代わりに支払う約束をした、あるいは相続で引き受けたなど、はっきりした根拠がない限り、住所が同じというだけで責任は移りません。


相談者が求めていたのは、細かな条文の説明というより、「恐れていた最悪の形が現実になるのか」という確認でした

坂井弁護士の答えは、その点をまっすぐに否定し、まず呼吸を戻させるものでした。

■なぜ勝手に住所を移せたのか、それでも家族の責任にはならない

相談者は「どうしてそんなことができるのか」という疑問も抱えていました。

住所変更は、基本的には届出で動く仕組みです。

もし虚偽があれば問題になり得ますが、だからといって、住所を使われた側に新しい義務が生まれるわけではありません。


ここは少しややこしいのですが、仕組みを一段だけ理解すると気持ちが変わります。

相手が書類上の住所を動かしたことと、こちらが相手の人生や負債を背負うことは別です。

怖さは「結び付いていないものを、頭の中で結び付けてしまう」と増幅します。

坂井弁護士は、その結び目をほどき、必要以上に自分を責めない位置へ相談者を戻していきました。

■ブラックリストの質問に「いま考える意味が薄い」と言った静かな理由

相談者は、甥のブラックリストが何年で消えるのかも尋ねました。

甥がアパートを借りられるようになってほしい、生活を立て直してほしい、そんな気持ちもにじみます。


しかし坂井弁護士は、一般論として簡単には消えないと触れた上で、そもそも督促状が届いている現状では、その質問自体の意味が薄いと示します。

借金が残ったままなら、年数だけを数えても現実は動かないからです。


これは冷たい突き放しではなく、焦点の移し替えでした。

未来の不安に意識が飛ぶほど、現在の輪郭がぼやけます。

ぼやけたまま考えると、余計に怖くなる。

いま起きている事実を見て、順番を整える。坂井弁護士はそう促していました。

■親戚づきあいの難しさは、情と境界線の間で揺れること

甥は夫の兄の子で、すでにその兄は亡くなっているといいます。

甥は二度結婚して二度離婚し、子どもはいない。

生活が荒れている背景は想像できます。

だからこそ、相談者も強く拒み切れず、荷物を置かせ、住所も使われ、結果として不安を抱え込んでしまったのかもしれません。


けれど、家は家族の生活の場です。

にぎやかな暮らしがあるからこそ、外からの不安が入り込んだ時の揺れは大きく感じられます。

情があること自体は悪くありません。

ただ、情だけで境界線が消えると、暮らしの安全が薄くなります。

坂井弁護士の「心配しなくていい」という言葉は、まず法律の線を引き直し、相談者が抱え込んでいた重さを一度下ろさせました。

■心を落ち着かせるために必要なのは「責任の所在」を確かめ続けること

不安が強い時、人は「全部こちらに来る」と感じやすくなります。

督促状も、住所の問題も、もしもの時の手続きも、ひと塊になって迫ってくるからです。


しかし、事実を丁寧に分けていくと、見えるものが変わります。

甥の負債は甥のもの。

住民票が家にあることと、家族が返済義務を負うことは別。

まずここが柱になります。柱が立つと、郵便物の不気味さも、少しずつ「ただ届いているだけのもの」へ戻っていきます。


もちろん、生活上の煩わしさは残ります。

郵便物が来るたびに気分が沈むこともあるでしょう。

それでも、責任が移る恐れがないと分かっているだけで、心の揺れは抑えられます。怖さの中心が抜けるからです。

■まとめ

今回の相談から見えるテーマは、家族と親戚の境界線、そして「優しさ」と「責任」を混ぜないことだと感じます。

住民票の住所が自宅になっているという事実は不快で、督促状は心を消耗させます。

それでも、住所が同じというだけで、息子や孫が借金を背負うことにはつながりません。

まず、その線を静かに確認することが、不安を小さくする第一歩でした。


悟として思うのは、線引きは相手を切り捨てるためにあるのではなく、自分たちの生活を守るためにある、ということです

助けたい気持ちがあっても、暮らしの安心を削ってまで抱える必要はありません。

責任の所在を確かめ、順番を整え、できる範囲を見極める。

そうすれば、心は少しずつ落ち着きを取り戻します。


今日も郵便受けを開ける手が重いかもしれません。

それでも「背負わなくていいものは背負わない」と決めるだけで、夜の長さは変わってきます。

相談者様の暮らしの静けさが、ゆっくり戻っていきますように。


放送はこちらから視聴できます

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。

その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。

もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。

どれが正しいということはありません。

今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。

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その不安が先に立って、踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。

このブログでは、そうした気持ちを抱えたままでも選べる、誰にも知られず、心の内をそっと預けられる相談先もまとめています。

無理に利用する必要はありません。


ただ、自分に合う距離感の相談先が他にもあるということを、必要になったときに思い出していただければ十分です。

→ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ


どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。

またゆっくりとお会いできますように。

──悟(さとる)

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