パワハラへの復讐でデータ消去?損害賠償請求への対処法を弁護士が解説

窓の外を眺めながら、思索にふける若い女性。落ち着いたセミリアルタッチのイラスト。

2025年12月11日 木曜日
パーソナリティ: 柴田理恵
回答者: 塩谷崇之(弁護士)


こんにちは、悟(さとる)です。

本日はテレフォン人生相談から、パワハラを受けた腹いせに会社のデータを消去して退職したところ、多額の損害賠償を請求されてしまった21歳女性からの相談です。

仕事場での理不尽な扱いに、つい感情が爆発してしまうことは誰にでもあるかもしれません。

しかし、その一時の感情による行動が、のちに自分を苦しめる大きな火種となってしまうことがあります。

若さゆえの正義感と、法という現実の壁。

その狭間で揺れる相談者の姿を通じて、私たちが社会で身を守るために必要な知恵を一緒に考えていきましょう。

■社長の執拗なパワハラとリベンジ退職の背景

今回の相談者は21歳の女性で、母親と二人で暮らしています。

彼女は1年1ヶ月の間、ある会社に勤めていましたが、そこは驚くほど人の入れ替わりが激しい職場でした。

その原因は、社長による凄まじいパワハラにありました。

社長の態度は極めて理不尽なもので、指示通りに動いても「そんなことは言っていない」と一蹴し、怒鳴りつけることが日常茶飯事でした。

経理の数字が合わなければ、全く触れてもいない事務員をターゲットにして犯人扱いをすることもありました。

社長はその時々にターゲットを決め、精神的に追い詰めていくような人物だったようです。

相談者が1年という月日を耐えられたのは、たまたま同時期に入った経理担当者が支えになってくれたからでした。

しかし、その支えだった同僚もパワハラに耐えかねて辞めることになります。

その際、その同僚は怒りのあまり「全てのデータを消して辞めます」と宣言し、実行しました。

その様子を目の当たりにし、自分自身も限界に達していた相談者は、退職を決意した際に同じ行動を取ってしまいます。

彼女が消去したのは、賃金台帳や出勤簿といった彼女自身が入力していたデータでした。

紙の資料として残っているから実務上の問題はないだろうという安易な思い込みと、どうしても社長に一矢報いたいというリベンジの感情が彼女を突き動かしました。

しかし、この「消してやろう」という幼い復讐心が、退職後の彼女をさらなる苦境へと追い込むことになります。

■突きつけられた損害賠償請求と刑事告訴の脅し

会社を辞めてから一ヶ月が経とうとした頃、相談者の元に社長から電話が入ります。

内容は、消去されたデータの復旧作業に来なければ訴えるというものでした。

社長に会いたくない一心で連絡を拒絶していた彼女に対し、次に届いたのは「通告書」という重々しい書類でした。

そこには、二週間以内に25万円を支払わなければ刑事告訴と損害賠償請求を行うという、最後通牒とも言える言葉が並んでいました。

社長は、紙で残っているはずのデータについても「そんなものは残っていない」と主張し、頑なに相談者本人を呼び出そうとします。

相談者は、自分が捕まっても構わないと自暴自棄な言葉を口にしますが、その裏には社長に対する恐怖と、どう対処していいか分からない困惑が透けて見えます。

さらに問題を複雑にしているのは、会社側が最後の月の給与である約7万円を支払っていないという事実です。

相談者は、そのお金さえいらないからとにかく関わりたくないと願っていますが、相手側は25万円という金額を盾に攻勢を強めています。

自分の蒔いた種とはいえ、21歳の若者が独りで背負うにはあまりに重い現実が、彼女の前に立ちはだかっています。

■弁護士が教える法的リスクと現実的な着地点

柔らかな光が差し込む窓辺と、白い机の上に置かれた一冊のノート。余白を活かした静かでミニマルな風景イラスト。

回答者の塩谷崇之先生は、まず相談者が行った「データの消去」という行為が持つ法的な重さについて、静かに、そして厳しく指摘されました。

業務で使うデータを意図的に消去することは、たとえ紙の資料が存在していたとしても、業務を妨害したと見なされ「電子計算機損壊等業務妨害罪」に抵触する恐れがあります。

仕事上のデータを故意に消去する行為は法的に極めて不利な立場を招くリスクがあります。

塩谷先生は、社長が主張する25万円という金額の正当性についても冷静に分析します。

もし本当に業者に依頼してデータを復旧させたのであれば、その領収書に基づいた請求は認められる可能性がありますが、単なる感情的な言い値であれば話は別です。

相手の本気度、つまり本当に裁判費用を投じてまで訴訟を起こすつもりがあるのか、あるいは単に脅して相談者を屈服させたいだけなのかを見極める必要があります。

そこで提案されたのが、弁護士という専門家を介した交渉です。

相談者本人が対応すれば社長の怒号に圧倒されるだけですが、弁護士が窓口となり「未払い給与の7万円」と「社長が行ったパワハラの事実」、そして「25万円の請求根拠」を対等に並べて交渉することで、泥沼の争いを収束させる道が見えてきます。

お互いにスネに傷を持つ状態であることを逆手に取り、これ以上の追及を互いに放棄する合意を目指すのが、最も現実的な解決策なのです。

■まとめ

今回の相談は、職場での理不尽なパワハラに対する反撃が、結果として自分自身を法的な窮地に追い込んでしまった事例でした。

社長の振る舞いは決して許されるものではありませんが、それに対抗する手段として「業務データの破壊」を選んでしまったことは、社会人として大きな痛手となります。

自分を守るための戦いにおいては法に触れる手段を選ばないことが最善の防御となります。

私たちは怒りに震える時、どうしても「目には目を」という考えに陥りがちです。

しかし、理不尽な相手と同じ土俵に立ってしまえば、相手に攻撃の口実を与えるだけになってしまいます。

特に若い世代の方々にとって、社会のルールを知ることは、自分自身の自由を守るための盾になります。

人間関係のトラブル、特に雇用主との争いにおいては、感情を切り離し、いかに冷静に法的な権利を主張できるかが鍵となります。

今回の経験が、相談者にとって社会という場所の厳しさと、自分を守るための正しい智慧を学ぶ糧となることを願ってやみません。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。

その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。

もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。

どれが正しいということはありません。

今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。

◆ テレフォン人生相談に相談してみたい方へ

寄り添って話を聴いてもらいたいとき、人生経験の深い回答者の言葉に触れたいとき──

テレフォン人生相談は、長い歴史の中で多くの方の迷いを受け止めてきた相談先です。

番組という特性上、相談内容が“広く届けられる形”になることもありますが、その分だけ、そこで得られる言葉には力があります。

▶︎ テレフォン人生相談・相談受付ページ(公式)

◆ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ

テレフォン人生相談のように、限られた時間の中で専門家の言葉を受け取る形が合う方もいれば、

「相談したこと自体が、どこかに伝わってしまうかもしれない」

その不安が先に立って、踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。

このブログでは、そうした気持ちを抱えたままでも選べる、誰にも知られず、心の内をそっと預けられる相談先もまとめています。

無理に利用する必要はありません。


ただ、自分に合う距離感の相談先が他にもあるということを、必要になったときに思い出していただければ十分です。

▶︎ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ

◆ 言葉にしきれない思いを、静かに整理したいときに

誰かに直接相談するほどではないけれど、頭の中や胸の奥に、まだ整理しきれていない思いが残っている──そんなときもあるかもしれません。

「何が不安なのか」「どこで引っかかっているのか」それをはっきりさせるだけで、気持ちが少し落ち着くこともあります。

最近は、名前を明かさず、顔も出さず、今の状況や気持ちを言葉にするだけで、第三者の視点を受け取れるサービスもあります。

答えを決めてもらうためではなく、自分の気持ちを整理する“きっかけ”として、こうした選択肢があることも、そっと置いておきます。

▶︎ 今の気持ちを、静かに整理してみたい方へ


どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。

またゆっくりとお会いできますように。

──悟(さとる)

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