テレフォン人生相談 2025年11月17日 月曜日
パーソナリティ: 加藤諦三
回答者: 大原敬子(幼児教育研究)

こんにちは、悟(さとる)です。
本日はテレフォン人生相談から、夫の収入を知らされないまま暮らしてきた女性が、介護をきっかけに夫婦の温度差に向き合うお話です。
結婚生活が長くなるほど、「いまさら聞けないこと」が増えていくことがあります。
けれど、聞けないままにしてきたことが、ある日ふいに胸の奥で形を変え、不満や寂しさとして浮かび上がる。
今回の相談は、まさにその瞬間に立たされているように感じました。

見えない家計のまま、年月だけが積み重なった
相談者は59歳。夫も同い年です。
娘が二人いて、30歳と27歳。すでに家を出ていて、結婚はしていないものの独立しています。
子育てが一段落したこの時期に、相談者は夫との関係を改めて見つめ直さざるを得なくなりました。
発端の一つは「お金」です。
相談者は、結婚してから30年以上、夫の給与を一度も明らかにしてもらっていません。
生活費は受け取っていたものの、金額の根拠が分からない。
子どもが小さい頃は、学費は出してくれても、定期代や部活動の費用など日々の細かな出費は自分がやりくりするしかなく、家計は常に窮屈だったといいます。
しかし数年前、娘に「うちがそんなに貧乏なはずがない。平均収入くらい調べてみたら」と促され、相談者は初めて夫の収入を推測し始めました。
調べてみると、驚くほど高い水準に見えた。
本人いわく「サラリーマンとしては最高クラス」かもしれない、と。
「もしそれほどの収入があるのなら、なぜ私はこんなにぎりぎりの暮らしをしてきたのだろう」
この疑問は、お金そのものへの怒りというより、長年の暮らしの手触りが否定されるような、言葉にしにくい虚しさを生んでしまいます。
相談者の声には、どこか笑いを混ぜながらも、置き去りにされた心の痛みが滲んでいました。
介護が映し出した、夫の「温かみのなさ」
もう一つの軸は、義母の介護です。
介護が始まり、相談者は自分が担う場面が増えていきます。
ところが夫から返ってくるのは労いではなく、「君がやりたくてやってるんでしょう?」というような冷たい反応でした。
介護は体力だけでなく、気持ちも消耗します。
そこで必要になるのは、完璧な段取り以上に「ありがとう」「助かるよ」といった、相手の心の存在を認める一言だったりします。
相談者が求めていたのは、その一言に近かったのかもしれません。
さらに夫は、食事の形やタイミングに強いこだわりがある様子です。
炊きたて、焼きたて、揚げたてでないと食べない。
丼ものは避ける、麺類も嫌がる。家庭内に細かな「決まり」が積み重なるほど、相談者の自由は削られていきます。
介護の負担が重なると、その窮屈さは以前より鋭く感じられるようになります。
相談者の問いははっきりしています。
このまま夫と暮らし続けるには、どうすれば自分が苦しくならないでいられるのか。
あるいは、60歳が近い今、性格は変わらないと割り切って別居などを考えた方がいいのか。
「一緒にやっていきたい気持ちはある。でも温かみを感じないまま、この先も続くのだろうか」
その迷いが、相談全体を貫いていました。
大原敬子の助言:変わっていない夫と、変わってきた自分
大原敬子先生は、まず相談者の認識を大きく整理します。
要点は、「夫は昔から変わっていない。変わってきたのは、あなたの心のほう」という見立てでした。
少し厳しく聞こえるかもしれませんが、ここで言いたいのは責めることではなく、起点を取り戻すことだと感じます。
結婚当初、相談者はお金のことを深く聞かなかった。
それは、争いたかったからではなく、夫に気に入られ、円満でいたいという気持ちが強かったからだと先生は読み解きます。
夫の価値観に合わせ、波風を立てず、愛されやすい自分でいようと工夫してきた。
ところが子どもが成長し、生活の段階が変わると、同じ状態でも見え方が変わります。
「なぜ私は知らされないのか」「なぜ感謝がないのか」という疑問が、以前より大きくなる。
先生は、そこを「あなたの心の変遷」と表現しました。
先生が繰り返したのは「原点」です。
夫が隠しているかどうか、という見方に引っ張られるほど、二人の関係は悪くなる。
なぜなら、夫は「聞かれなかったから言っていない」と考えている可能性があるからです。
結婚当初から「家計の開示」という形が作られていないなら、夫の側にとっては、それが当たり前の運用になってしまう。
先生は「戦うのではなく、ちゃんと言えば受け入れる人もいる」と述べ、話し合いの方向性を「対立」ではなく「型を作り直す」ほうへ導こうとします。
また先生は、夫の家庭背景にも触れます。
食事の形にうるさい、しきたりを重んじる。
そこから、しっかりした家庭で育った可能性を見立て、「失ったら損」とまで言います。
これは「我慢しろ」という意味ではなく、相談者が今抱えている怒りの先に、守るべきものが残っているかもしれない、という確認に聞こえました。
さらに印象的だったのは、「お金に執着する人は愛を求めている」という趣旨の言葉です。
先生は、夫が単に欲しいものを買うために貯め込むタイプではなく、もっと別の理由でお金にこだわっている可能性を示します。
愛が分かりにくい人ほど、安心を「数字」や「蓄え」で確かめようとすることがある。
相談者が向き合っているのは、家計の不透明さだけでなく、夫の不安の形なのかもしれません。
そして最後に、老後について「添い遂げていけば心配ないのでは」と語り、相談者の足元を落ち着かせました。
現実の安心材料を一度置いてみることで、感情が暴走しにくくなる。
先生の語り口は、そうした鎮静の意図を含んでいたように思います。
加藤諦三の補足:劣等感は「所属感の欠如」から生まれる
終盤、加藤諦三さんは、相談者が求めている「温かみ」そのものを扱います。
夫は小さい頃から温かみを味わっていないのではないか。
だから分からないのかもしれない。
相談者も「おそらく分からないのだと思う」と応じます。
そこで加藤さんは、夫の劣等感の強さに触れます。

夫は劣等であるから劣等感を持つのではない。
劣等感の原因は、能力や成績ではなく「所属感の欠如」だ、と。
自分がその家の一員だと感じ、温かい場に属している実感がある人は、心の土台が育ちやすい。
一方で、属している感覚が育たないと、心はいつまでも居場所を探し続け、その不安が劣等感として表れやすい。
加藤さんはそのように説明し、相談者の理解を促しました。
劣等感は簡単には治らない。
だからこそ、妻が夫に「人の心」を教えるつもりで関われば、関係は変わり得る。
ただしそれは簡単な仕事ではなく、妻が「一枚も二枚も上手」になり、落ち着いて導く必要がある。
相談者はそれを「三人目を産んだと思って頑張る」と冗談めかして受け取り、会話は少し明るい余韻を残して終わります。
まとめ:お金の話は、心の居場所の話にもつながる
今回の相談は「夫が高収入なのに教えてくれない」という出来事から始まりましたが、芯にあったのは、長い時間をかけて積もった「温かみの不足」だったように思います。
家計の透明性は、単なる数字の問題ではなく、「私はこの家庭の一員として尊重されているか」という感覚と結びつきます。
介護の場面で感謝がないと感じた時、その結びつきはさらに強く意識されます。
いま必要なのは、責める言葉よりも、二人の「型」を静かに作り直す視点かもしれません。
悟としては、相談者が自分を責めすぎず、同時に「我慢だけ」に戻らないでほしいと感じました。
聞けなかった理由が優しさだったなら、これからは優しさのまま、聞く形を作っていけばいい。
温かみを知らない相手に温かみを求めるのは、簡単ではありません。
でも、求め方を変えると、伝わり方が変わることもあります。
この先をどう選ぶとしても、相談者の毎日が「静かに息ができる形」に近づくことを願っています。
放送はこちらから視聴できます
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。
その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。
もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。
どれが正しいということはありません。
今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。
◆ テレフォン人生相談に相談してみたい方へ
寄り添って話を聴いてもらいたいとき、人生経験の深い回答者の言葉に触れたいとき──。
テレフォン人生相談は、長い歴史の中で多くの方の迷いを受け止めてきた相談先です。
番組という特性上、相談内容が“広く届けられる形”になることもありますが、その分だけ、そこで得られる言葉には力があります。
◆ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ
テレフォン人生相談のように、限られた時間の中で専門家の言葉を受け取る形が合う方もいれば、
「相談したこと自体が、どこかに伝わってしまうかもしれない」
その不安が先に立って、踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。
このブログでは、そうした気持ちを抱えたままでも選べる、誰にも知られず、心の内をそっと預けられる相談先もまとめています。
無理に利用する必要はありません。
ただ、自分に合う距離感の相談先が他にもあるということを、必要になったときに思い出していただければ十分です。
→ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ
どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。
またゆっくりとお会いできますように。
──悟(さとる)


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