テレフォン人生相談 2025年11月6日 木曜日
パーソナリティ:柴田理恵
回答者:大原敬子(幼児教育研究)

こんにちは、悟(さとる)です。
本日はテレフォン人生相談から、仕事復帰で心の余裕をなくした母親が、4歳の長女との向き合い方とのびのび子育てについて悩んだご相談です。
相談者は、38歳の母親。
年下の夫と、4歳の長女、1歳の長男の4人家族です。
育休中は、子どもとゆっくり向き合える時間もあり、家庭は穏やかな空気に包まれていました。
しかし、数か月前に仕事へ復帰してから状況が一変します。
ハードな勤務に追われる毎日で、疲労と焦りが重なり、つい長女にきつく当たってしまう場面が増えていきました。
一方で、長女は母の表情や雰囲気にとても敏感で、「ママ大好きだよ」「笑って」と声をかけてきます。
その姿は優しさにあふれている一方で、相談者には、幼いころに親の顔色をうかがって生きてきた自分自身の記憶を重ねてしまうところもあり、心が揺れます。
今回は、そんな相談者の背景と迷いをたどりながら、大原敬子先生の助言を通して、「仕事」「夫婦関係」「子育て」のバランスをどう整えればよいのかを整理していきます。
・相談内容の概要
家族構成と日常の状況
相談者は38歳の女性。
夫は9歳年下の29歳で、子どもは4歳の長女と1歳の長男の2人です。
育休中は、子どもと過ごす時間にゆとりがあり、長女ものびのびと過ごしていました。

しかし、数か月前に育休から仕事へ復帰すると、状況は大きく変わります。
職場の仕事は非常にハードで、毎日クタクタになるほどの忙しさです。
その疲労が家にも持ち込まれ、相談者はちょっとしたことでも長女に怒ってしまうようになりました。
特に負担を感じるのは、家事と育児が重なる時間帯です。
夕食の支度をしているときや、お風呂の準備をしているときに限って、長女は「ママ見て」「一緒にやって」と甘えてきます。
仕事で疲れているところに、余裕のないタイミングでの要求が重なり、思わずきつい言葉を出してしまうこともあると打ち明けました。
長女の「空気を読む」行動と母の葛藤
長女は4歳ながら、母の様子をよく観察しています。
相談者が疲れているときや、表情が険しくなっているときには、その変化を敏感に感じ取り、「ママ大好きだよ」「笑って」と声をかけてきます。
相談者も「ママも大好きだよ」と返しますが、そのやりとりに、喜びと同時に複雑な気持ちを抱えていました。
長女が本心から言ってくれていることはわかりつつも、「これを言えばママは喜ぶ」と子どもなりに計算しているのではないか、確認行動のようになっているのではないかと感じる瞬間もあるのです。
さらに、長女は母の顔色をうかがいながら、泣きそうな顔をして様子を見ていることもあります。
その姿が、相談者自身の幼少期の記憶を呼び起こします。
・相談者の生い立ちと「いい子」でいようとした過去
母子家庭で始まった幼少期の苦労
相談者は、母子家庭で育ってきました。
実の母親は結婚と離婚を何度も繰り返し、そのたびに新しい父親ができては別れ、名字が変わる生活を送ってきたといいます。

小学校1年生のころから、炊事や家事の多くを自分が担っていました。
家庭の中で子どもらしく甘えるよりも、家のことをこなし、母の機嫌や家庭の空気を読むことが日常の一部になっていたのです。
母親はとても厳しく、相談者の表現では「軍隊のような家庭」。
反抗したこともあったものの、結局は従わざるを得ない状況が続きました。
褒められることは少なく、「ちゃんとやって当たり前」という空気の中で育ってきた経験があります。
そのため、相談者のなかには「自分が頑張らなければ」「いい子でいなければ」という感覚が根付きやすく、今の子育てにも影響していると感じていました。
自分の子どもには同じ思いをさせたくない
こうした生い立ちから、相談者は、自分の子どもには同じような寂しさや我慢をさせたくないと強く思ってきました。
しかし現実には、仕事と家事と育児の重なりで余裕を失い、イライラを長女にぶつけてしまう場面があります。
そのたびに「自分も母親と同じようになっているのではないか」「子どもの前で穏やかな母親でいたいのに、できていない」と自分を責めてしまいます。
夫との関係にも揺れがありました。
夫婦仲が良くない時期には離婚も考えたことがあったと語ります。
その後、関係は改善傾向にあるものの、仕事復帰と生活の変化が重なり、再び心のバランスを崩しやすい状況になっていました。
・マイホームとワンオペ育児がもたらした負担
戸建て購入で変わった夫の通勤と役割分担
相談の中で、もう1つ大きな転機として語られたのが「マイホーム」の購入です。
夫婦は賃貸住宅から戸建てへと住まいを移しました。

その結果、夫の通勤時間が大幅に伸びてしまいます。
通勤時間が長くなったことで、夫が家庭で過ごせる時間は減り、家事や育児の実質的な負担は相談者に集中するようになりました。
育休復帰後は、仕事の疲れにワンオペに近い育児が重なり、「なぜ自分だけがこんなに大変なのか」と感じる気持ちが強くなっていきます。
夫に対しても「もっと手伝ってほしい」という思いが高まり、イライラが募ることも少なくありませんでした。
現在は、夫もできる範囲で家事や育児を手伝うようになり、以前より夫婦関係は改善してきています。
それでも、相談者の心の中には、過去の不満や積み重なった疲れが残っており、完全に気持ちを切り替えることが難しい状態でした。
・大原敬子先生の見立て
まず「自分の心の置き場所」を見直す
大原先生は、相談者が一番気にしていることを確認したうえで、「あなた自身の心の置き場所を見直すことが大切」と静かに伝えます。
相談者は、夫の顔色も子どもの様子も、どちらも気にかけて動いてきました。
その結果、「夫への愛」と「子どもへの愛」が半々の状態で揺れ続けており、自分の優先順位がはっきりしないまま日々をこなしているような形になっていました。
大原先生は、楽天的に生きる人は「自分の意思」と「優先順位」をしっかり持っていると説明します。
状況に流されるのではなく、「今の自分にとって何を大事にするのか」を、自分で決めておくことがポイントだと整理しました。
この時期は「子どもを最優先」に据える
具体的には、今の相談者にとって一番大事な存在は誰なのかを確かめていきます。
夫と子どものどちらが大切かという問いに、相談者は迷いながらも「子どもです」と答えました。
そこで大原先生は、「今の数年は、どんなことがあっても子どもを優先する時期だと心に決めてよい」と伝えます。
子どもはまだ4歳と1歳で、体調も崩しやすく、手がかかる時期です。

この限られた時期だけは、仕事よりも子どもの生活と安心を優先する「軸」を自分の中に持つこと。
それが、後々の後悔を減らし、親子の関係を安定させる土台になるという視点でした。
もちろん、仕事は大切で、職場にも迷惑をかけたくない思いがあります。
しかし大原先生は、「仕事には代わりがいても、子どもと夫には代わりがいない」とはっきり言葉にします。
ここで一度、「自分はスーパーマンではない」と認め、できる範囲での働き方や家事の手抜きを考えてよいのだと整理していました。
・子どもが顔色を見るのは「愛が十分ある」証拠
「ママ大好き」は不安よりも愛情表現
相談者は、長女が「ママ大好きだよ」「笑って」と繰り返す様子に、どこかプレッシャーを感じていました。
自分の幼少期の経験と重ねてしまい、「不安から母の機嫌をうかがっているのでは」と心配していたのです。
これに対して大原先生は、子どもが親の表情や様子をよく見ているのは、「親からの愛情が十分にあるからこそ」と説明します。
親のことが大好きで、その存在をいつも意識しているからこそ、表情の変化に敏感になるのだという視点です。
相談者の長女は、母の疲れやイライラを察しながらも、「ママ大好き」と伝えたり、「笑って」と願ったりしています。
その姿には、母親を思いやる気持ちと、母とのつながりを大切にしようとする心が表れているといえます。
言葉よりも「触れ方」で伝わる安心感
大原先生は、子どもにとって一番嬉しいのは、言葉そのものではなく「体の触れ合い」だと話しました。
「好きだよ」という言葉は一瞬で消えてしまうことがありますが、抱きしめられた感覚や、ほほに触れた温かさは、子どもの記憶に残りやすいものです。

相談者の長女は、「ママ大好き」「笑って」に続けて、「ギュッてして」「抱っこして」「手をつないで」と求めてくるといいます。
忙しい時間帯にそれを言われると、負担に感じてしまうこともありますが、それはまさに子どもが安心を求めているサインだと整理できます。
育休中はスキンシップを多く取れていたものの、仕事復帰後は、言葉はかけていても、ゆっくり抱きしめる時間が減っていたことに相談者自身も気づきました。
大原先生は、「今日は何も言わなくてもよいので、抱きしめたり、そっと体に触れたりする時間を意識してみてほしい」と提案します。
言葉で何かを説明しようとするよりも、「ここにいるよ」「大事に思っているよ」という感覚を、肌の触れ合いで伝えていくことが、子どもの安心につながるというメッセージでした。
・夫婦関係と仕事との付き合い方
マイホームと通勤時間がもたらしたすれ違い
戸建て購入によって夫の通勤時間が長くなり、相談者は「自分ばかり大変だ」という思いを募らせてきました。
大原先生は、育休中と現在とでは、夫の置かれている状況も違うことに触れます。
以前より家事を手伝えないのは、単にサボっているからではなく、通勤時間の増加や働き方の変化も影響している可能性があります。
そのうえで、「あのときはもっとやってくれたのに」という比較だけで夫を見てしまうと、互いに不満が増えてしまうと整理しました。
「頑張りすぎない」ことを自分に許す
大原先生は、相談者に対して、「頑張りすぎないでほしい」という言葉を繰り返します。
仕事・家事・育児・夫婦関係のすべてを完璧にこなそうとすると、心も体も疲れ切ってしまいます。
今は特に、子どもが小さく、手がかかる時期です。
この数年間だけは、「家事をきちんとしなければならない」「仕事で期待に応えなければならない」と自分を追い込むより、「今は子どもと向き合う時期」と割り切ることも選択肢のひとつになります。
仕事の代わりは誰かが務めることができますが、母親の代わりは誰も務められません。

夫も子どもも、唯一無二の存在であり、その関係を守ることが、長い目で見たときの土台になっていきます。
・まとめ
今回の相談からは、いくつかの大きなテーマが浮かび上がります。
ひとつは、「自分の優先順位をはっきりさせる」ということです。
仕事も家庭も大切な中で、特に就学前の数年間は、子どもの安心とスキンシップを最優先にしてよいという視点が示されました。
もうひとつは、「子どもが親の顔色を見ること」の意味です。
それは必ずしも不安だけを表しているのではなく、「大好きな人のことをよく見ている」姿でもあります。
その愛情に応えるために、完璧な言葉よりも、短い時間でも抱きしめる、手をつなぐといった、具体的な触れ合いが大切だと整理されました。
さらに、夫婦関係と仕事との向き合い方も重要なテーマでした。
マイホーム購入や働き方の変化が、知らないうちに夫婦間の負担バランスを変え、イライラや不満を生むことがあります。
その中でも、「仕事には代わりがいる」「家族には代わりがいない」という原点を確認し、完璧を目指しすぎない姿勢が大切だと示されています。

「のびのび子育て」という言葉は、子どもだけでなく、親の心にも余裕がある状態を含んでいます。
親が自分を追い込みすぎず、優先順位を決めながら日々を選び取っていくことで、子どもも安心して自分らしさを伸ばしていけるのかもしれません。
放送はこちらから視聴できます
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
人生に正解はありませんが 、誰かの悩みを知ることで、自分の心が少し楽になったり、新しい考え方に気づけることもあります。
このブログが、読んでくださった方の「明日を生きるヒント」になれば幸いです。
またぜひ遊びに来てくださいね。
以上、悟(さとる)でした。

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