2025年11月7日 金曜日
パーソナリティ: 田中ウルヴェ京
回答者: 三石由起子(三石メソード主宰、作家・翻訳家)

こんにちは、悟(さとる)です。
本日はテレフォン人生相談から、「働かない次女が心配で、どう声をかければよいかわからない」という相談内容の概要です。
家族の将来を思うほど、言葉が強くなりそうで抑えてしまう。
けれど放っておくのも不安。
その間で揺れる気持ちが、静かににじむ回でした。
相談の背景:家にいる次女を前に、父の不安が膨らむ
相談者は63歳。
妻は62歳で、家では次女(28歳)と長男(25歳)が同居し、長女(32歳)は結婚して別に暮らしています。
生活は回っていると語りつつも、次女が高校卒業後ほぼ働かず、家にいる年月が長いことを案じていました。

父は「働く経験を積んでほしい」と願っています。
自分たち夫婦が年を重ね、いずれいなくなることを思うと、社会との関わりが薄いままでは困るのではないか、と心配が先に立ちます。
一方で、強く詰め寄ることはしていません。
将来の話題を向けると、次女が面倒くさそうな顔をして部屋に入ってしまい、会話が続かないからです。
ここで印象的なのは、父の戸惑いが「娘を動かす方法」よりも先に、「どんな声かけが正しいのか」という迷いとして現れている点です。
本人は外に出て早く自立したい性格だったと語り、家にとどまる次女の在り方が理解しづらい。
けれど理解できないからといって切り捨てたいわけでもなく、ただ将来が怖い。
そんな葛藤が、笑い混じりの言葉の奥に残ります。
さらに、次女は何もしていないわけではなく、食事を作り洗濯など家事を担っている様子も語られます。
父はそこを認めつつも、「仕事」という形になっていないことが引っかかる。
家族の中で役割は回っているのに、安心につながらない。
そのズレが相談の核になっていきます。
次女の輪郭:静かで文化的、絵が得意だった
父によれば、次女は静かな性格で、文化的なことが好きでした。
絵を描くのが得意で、高校卒業後には絵の専門学校に進んだものの、二か月ほどで辞めてしまったといいます。
なぜ続かなかったのか、父と母は詳しく聞かなかった。
根掘り葉掘りはしないようにしてきた、と語られます。
その後、アルバイトをした時期もあったようですが長続きはせず、面接を受けている気配はあるものの、父の期待するほど「ガツガツ」進めているようには見えない。

父は理由がわからないと言い、わからないからこそ、どの言葉も的外れになる気がして、踏み込めなくなっていました。
家の中には、姉妹の関係と、兄妹の関係の差もあります。
長女と次女は仲がよい一方で、次女と長男は仲がよくないという説明がありました。
家の中で居場所があるようで、緊張もある。
そうした空気の中で、父は「将来の自立」を正面から切り出しにくくなっていたのかもしれません。
三石由起子さんの助言:結論は「父が考え方を変える」
回答者の三石由起子さんは、まず父の人生経験を認めたうえで、「今の感覚」で娘を見ていること自体をいったん外してみようと促します。
昔は、高校卒業後に家にいて家のことをしながら過ごすことも珍しくなく、学歴や就職に対する価値づけも今とは違った、と話を進めます。
ここで三石さんが伝えるのは、「働くことが悪い」という話ではなく、父の不安の中心にある“前提”を見直す視点です。
父が娘に望んでいるのは、経験そのものというより「社会的な身分」なのではないか。
会社員、学生といった肩書があることで安心する考え方に、知らず知らず縛られているのではないか、と言葉を重ねます。
そして、身分がなければ不安だという感覚は「洗脳されちゃってる」とまで言い切り、父の思考の枠を揺さぶります。
この助言の狙いは、娘を変える前に、父の言葉の質を変えることにあります。
「自分が死んだら困るだろう」といった未来の不安を正面からぶつけても、家にいる28歳の娘には響きにくい。
意味がわからないし、聞くはずがない、と三石さんは率直に述べます。
「働け」より先に、家の中での働きを言葉にする
では、何から始めるのか。
三石さんがまず提案したのは、次女が日々している家事に対して、父の口からきちんと感謝を伝えることでした。

母が助かっていること、家の中で支えになっていることを「パパとして」言葉にする。
そこから会話の土台が生まれる、と考えます。
家事は、当然のように存在してしまうと、誰かの努力が見えにくくなります。
けれど、見えにくいからこそ、承認が欠けると関係の空白が広がる。
三石さんは、その空白を埋める最初の一言として「助かっている」「喜んでいる」を示しました。
働く・働かないの議論の前に、いま家の中で起きている現実を丁寧に扱うことが、対話の入口になるということです。
将来の話は「不安の説明」ではなく「選択肢の提案」で
次に三石さんは、父が元気で働いている間は「できるだけのことはしてやる」と伝えたうえで、「やりたいこと、なんかないの?」と尋ねる形を勧めます。
焦らせるのではなく、選べる道があると示す。
そこで、次女が得意だった絵の話題に戻し、本格的な学校でなくてもアトリエ教室のような場所がある、行ってみたらどうか、と提案します。
もし行きたいなら費用は出す、と背中を押す声かけが例として語られました。
ここで大切なのは、父が“方向”を決めるのではなく、娘が自分で探してみる余地を残している点です。
「自分で探してね」と言い、選ぶ主体を娘に戻す。
そのうえで、父は支援者として関わる。
親子の距離が近いからこそ起きやすい、指示と反発の関係を避け、提案と選択の関係へ移す工夫と言えます。
番組の終わり:父が「枠にはめすぎ」を自覚していく
最後にパーソナリティの田中ウルヴェ京さんは、今日の話を受けて「枠にはめすぎ」を考えてほしいと父に伝えます。
「28歳になったらこうでなきゃ」という考えが強すぎると、本人も家族も苦しくなる。

人生の修行を続けながら、同世代として一緒に頑張ろう、と穏やかに締めくくりました。
父も「気が楽になった」と応じ、まずは自分自身が頑張らなければと思った、と語っています。
まとめ
今回の相談は、「働かない娘をどうするか」という表面の問題の背後に、家族の安心の作り方が問われていました。
社会的な肩書があると安心できるという感覚は、多くの人にとって自然です。
しかし、それだけが基準になると、家の中の働きや、本人の内側の歩みが見えにくくなり、言葉が届かなくなることがあります。
三石由起子さんの助言は、娘を押し出すのではなく、父のまなざしと言葉を整える方向でした。
感謝を言葉にし、支える姿勢を示し、やりたいことを一緒に探す。
そうした積み重ねが、家族の中に安心の土台を作り、結果として外の世界へつながる可能性を残します。
家族の問題は、正解を急ぐほど難しくなりがちです。
「こうあるべき」を一度ほどき、いまの生活の中でできていることを見つめ直し、対話を開く。
今回の相談は、親子関係だけでなく、家庭の中での役割や価値の置き方を静かに問いかけていました。
放送はこちらから視聴できます
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。
その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。
もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。
どれが正しいということはありません。
今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。

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寄り添って話を聴いてもらいたいとき、人生経験の深い回答者の言葉に触れたいとき──。
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このブログでは、そんな時に選べる“非公開の相談先”もまとめてあります。
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必要になったときに、そっとのぞいてみていただければと思います。
どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。
またゆっくりとお会いできますように。
──悟(さとる)

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