テレフォン人生相談 2025年11月18日 火曜日
パーソナリティ: 今井通子
回答者: 和田秀樹(精神科医)

こんにちは、悟(さとる)です。
本日はテレフォン人生相談から、息子との関係が薄れていく不安を抱える、80歳間近の女性の相談です。
誰かに頼りたい気持ちと、頼れば頼るほど距離が広がる気配。
その狭間で、心が落ち着かなくなることがあります。
今回の相談は、家族のつながりを求める気持ちを否定せずに、現実に足をつけてこれからを整えていく話でもありました。
■夫の裏切りの中で、暮らしを守ってきた
相談者は79歳の女性で、一人暮らし。
離婚は35年前ですが、実際にはその少し前、次男が大学に入った頃に家を出て、ひとりで生活を立て直してきたと話します。
結婚当初から夫には女性関係があり、嫌がらせを受けるようなこともあったそうです。
さらに夫は職場の人との出張先で女性を呼び出すなどを繰り返し、相手側が職場に訴えたことで解雇に至ったという説明もありました。
子どもたちがまだ小中学生だった時期に、生活の土台が揺らぐ。
そこで相談者は、怒りや惨めさを抱えながらも、まずは暮らしを回すことを優先し、学費のために必死に働いたと言います。
「大学に入ったら家を出る」と心に決めて、実行した。そこには、やり直したいという希望というより、崩れないための決断の重みが感じられます。
■長男に残った“捨てられた”という傷
ただ、子どもたちから見える景色は、同じではなかったのかもしれません。
長男は、相談者が家を出た時点で大学生で、その後は父親側で暮らし、結婚するまで同居していたそうです。
相談者が一度、手紙を出したことがあるものの、長男は怒り、「子どもを捨てておきながら」と強く責めたといいます。連絡の糸は、ここで大きく細くなってしまったのでしょう。
相談者は、子どもの了解を得て家を出たと話します。
けれど、子どもが“納得して受け止めきれたか”は、また別の問題です。時間が経っても、当時の感情だけが置き去りになることがあります。
■次男ともつながっているのに、遠のいていく
一方で次男とは、今も連絡は取れる。
ただ、その頻度が年々下がっていることが不安の中心でした。
電話をしても忙しいと言われ、出ないことも増え、「メールにしてほしい」と距離を取られる。
さらに、次男の妻とは最初から緊張があったようで、「姑への対抗心が強い」「警戒されていた」と相談者は感じています。
孫が小さい頃は預かって喜んでいたものの、成長するにつれて会わせてもらえなくなり、家族全体が遠のいた、と語りました。
ここで大切なのは、相談者が“悪い人だから避けられた”という単純な話ではないことです。
家族の距離は、正しさだけでは決まりません。
家庭ごとの空気、配偶者への配慮、生活の忙しさ、積み重なった感情。その複雑さの中で、連絡は「必要最低限」に変わっていきます。
■病気が重なり、不安が現実味を帯びてきた
相談者の不安が強まったきっかけは、この3年ほどの体調の変化でした。
股関節や膝の手術、心臓の治療としてバイパス手術も経験し、急に病気が重なったといいます。
一人暮らしのまま、この家で暮らし続けたい気持ちはある。
でも、もし今後さらに体が動かなくなったらどうするのか。
老人ホームを考えるべきか。そうした現実的な問いが、夜に静かに迫ってくるようになったのでしょう。
生活費に困っているわけではない、と相談者ははっきり言います。
だからこそ、問題はお金ではなく「頼れるつながりが薄れていくこと」そのものだったのだと思います。
■和田秀樹の助言:他人の気持ちは変えられない
ここで和田先生は、まず核心を言葉にします。
人は自分の気持ちは変えられても、他人の気持ちは変えられない。
息子が反省して近づいてくる可能性はゼロではないけれど、こちらが頑張ったからといって相手が変わるものではない、という見立てでした。
冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、これは突き放しではなく、期待で心をすり減らさないための線引きです。
関係を望むほど、返ってこない時に傷が深くなる。
そこから自分を守るために、相手の心の領域に踏み込みすぎない、という提案でした。
■和田秀樹の助言:努力の向け先を“自分の生活”へ戻す

和田先生は、相談者がこれまでしてきた準備をきちんと評価します。
年金や個人年金、住まいなど、生活に不自由がない形を整えてきたことを「立派」と言い、ここから先は、息子に変わってもらう努力よりも、別の努力のほうが実りやすいと促しました。
その努力とは、老人ホームの見学に行ってみる、介護保険で何が使えるのかを知る、といった現実的な準備です。
息子を追いかけて気持ちをつなぎ止めるより、自分が自分を助けられる仕組みを増やしていく。
そうすれば、不安は少しずつ“形のある課題”に変わっていきます。
和田秀樹の助言:これから10年で、世の中は進歩していく
さらに和田先生は、少し先の未来の話をします。
今79歳なら、本格的に体が動かなくなるのは、脳卒中などがなければ10年くらい先になりやすい。
その10年で世の中は大きく変わり、生活を支える技術やサービスは増えていく、という見通しです。
生成AIのように、話しかければ返事をする仕組みがあり、それを搭載したロボットが料理や買い物、風呂の準備まで担う可能性もある。
だから世の中は悪い方には進歩しない、と和田は言います。
ここで印象的だったのは、相談者自身がインターネットを見ており、パソコンが「相談相手」になっていると話した場面でした。
和田先生はそれを「すごい」「進歩した時代の高齢者」と肯定します。孤独を恥じるのではなく、今できる工夫を“力”として認める言葉でした。
■まとめ:家族を追うより、暮らしの安心を増やす
今回の相談は、老いと孤独が重なるとき、家族という存在が急に大きく見えてしまう、という話でもありました。
つながりが欲しい気持ちは自然です。ただ、相手の事情や感情は、こちらの願いだけでは動きません。
“関係を取り戻す”より、“不安を減らす”方向へ舵を切ることが、心を守る第一歩になるのだと思います。
悟としては、家族との距離ができたときに、そこで自分の価値まで下がったように感じてしまう人が少なくない、と感じます。
でも、相談者は苦しい状況の中で生活を立て直し、今の暮らしを守ってきました。
だからこそ、これからは「誰に分かってもらうか」よりも、「どうすれば安心して暮らせるか」を静かに積み上げていく。
家族の形が変わっても、人生の手綱はまだ手元に残っています。
少しずつ情報を集め、選択肢を増やし、自分の暮らしを自分で支える。
その積み重ねが、孤独の中に小さな安心を灯してくれるはずです。
放送はこちらから視聴できます
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。
その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。
もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。
どれが正しいということはありません。
今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。
◆ テレフォン人生相談に相談してみたい方へ
寄り添って話を聴いてもらいたいとき、人生経験の深い回答者の言葉に触れたいとき──。
テレフォン人生相談は、長い歴史の中で多くの方の迷いを受け止めてきた相談先です。
番組という特性上、相談内容が“広く届けられる形”になることもありますが、その分だけ、そこで得られる言葉には力があります。
◆ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ
テレフォン人生相談のように、限られた時間の中で専門家の言葉を受け取る形が合う方もいれば、
「相談したこと自体が、どこかに伝わってしまうかもしれない」
その不安が先に立って、踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。
このブログでは、そうした気持ちを抱えたままでも選べる、誰にも知られず、心の内をそっと預けられる相談先もまとめています。
無理に利用する必要はありません。
ただ、自分に合う距離感の相談先が他にもあるということを、必要になったときに思い出していただければ十分です。
▶︎ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ
◆ 言葉にしきれない思いを、静かに整理したいときに
誰かに直接相談するほどではないけれど、頭の中や胸の奥に、まだ整理しきれていない思いが残っている──そんなときもあるかもしれません。
「何が不安なのか」「どこで引っかかっているのか」それをはっきりさせるだけで、気持ちが少し落ち着くこともあります。
最近は、名前を明かさず、顔も出さず、今の状況や気持ちを言葉にするだけで、第三者の視点を受け取れるサービスもあります。
答えを決めてもらうためではなく、自分の気持ちを整理する“きっかけ”として、こうした選択肢があることも、そっと置いておきます。
どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。
またゆっくりとお会いできますように。
──悟(さとる)


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