テレフォン人生相談 2025年11月15日 土曜日
パーソナリティ: 加藤諦三
回答者: 坂井眞(弁護士)

こんにちは、悟(さとる)です。
本日はテレフォン人生相談から、亭主関白の夫のもとで生きてきた母が、燃え尽きた長女の将来を案じる相談です。
親としての後悔と、子の怒り。
どちらも簡単に片づけられないからこそ、日々の暮らしの中で言葉が刺さり続けます。
「自分がいなくなったら、この子はどうなるのか」。
その不安が強いほど、今ここで何を見直すべきかも、かえって見えにくくなります。
今日のやり取りは、親子の関係を“責める”ためではなく、息をし直すための線引きを探す時間でした。

結婚生活で積み重なった「従うしかない」感覚
相談者は76歳。
結婚した当初から夫は強い支配欲を見せ、「従えないなら出て行け」と言うような人でした。
さらに「男の子が生まれるまで産み続けろ」と迫り、第一子が女の子だと「女の子を産んでくれとは頼んでいない」とまで言ったといいます。
離婚を考えたことはあっても、実家の親を悲しませたくない気持ちや、社宅での世間体が足かせになり、決断できないまま年月が過ぎました。
気づけば「自分を殺して世間体のために生きてきた」と指摘され、相談者自身も主体性の薄さを認めています。
長女に向けられた期待が、いつの間にか“重さ”に変わった
子どもは二人。
長男には甘く、しっかりして見えた長女には要求が強くなったと相談者は振り返ります。
「これならできるでしょう」「こうした方がいい」と背中を押すつもりで、はっぱをかけ続けた。
それが今は、酷な言葉として長女の心に残っているのではないか、と。
別居を始め、母と娘の二人暮らしになってから、長女は抑えていた怒りを噴き出すようになりました。
「毒親だった」と責める言葉が、明け方まで何時間も続くこともある。
相談者は申し訳なさと、受け止めきれない疲れの間で揺れています。
燃え尽きと強迫症状、そして“働けない”不安の正体
相談者がいちばん心配しているのは、48歳の長女の生活です。
長女は高校時代に燃え尽きのような状態になり、その後も就労経験がないまま年齢を重ねました。
体力が十分でないという説明に加え、外出を妨げる強迫症状があり、触れたあと手洗いが止まらないなどの症状があると語られます。
家事や日々の段取りは母が担い、住まいは母が遺産で購入した一軒家。
夫からは月5万円の補助を受け、生活は年金と合わせて成り立たせている状況です。
相談者の恐れは明快です。
自分が先に逝ったあと、長女がこの家で暮らし続けられるのか。
生活の手順、金銭管理、外とのつながり。
どれも「今は母が代わっている」から見えにくい問題でもあります。
坂井眞の助言:責任の線引きと、世間体から降りる決意

坂井眞先生はまず、長男が45歳で働き自立しているなら、親としての基本的な責任はすでに果たしている、という視点を示しました。
ここで相談者は少し息をつきます。
そのうえで先生が強調したのは、過去の子育ての反省と、現在の娘の人生をすべて背負い続けることは別だという点でした。
成人以降の長い年月を「全部親の責任」にしてしまうと、母も娘も、いつまでも前に進みにくくなる。
環境や素質は人それぞれで、その枠の中で生きるしかない、という現実も語られます。
そしてもう一つ、相談者の根っこに残っている「人の目」を、ここで終わらせるよう促しました。
世間体を気にしない。
娘に何を言われても過度に振り回されない。
まず母が、自分の足場を取り戻すことが先決だ、という口ぶりでした。
世間体よりも、家の中の安全と安定を優先する。
加藤諦三の言葉:高すぎる理想が、努力を遠ざける
番組の最後に加藤諦三さんは、燃え尽きについて触れました。
燃え尽きる人は他人の期待に弱く、そして高い理想を持ちすぎる傾向がある。
高すぎる理想があると、現実の努力が後回しになることがある、と。
この言葉は、長女だけでなく、母にも当てはまるように聞こえます。
「娘は本来は賢い」「いつか立ち直るはずだ」という理想が高いほど、今日の生活の小さな一歩が見えづらくなるからです。
加藤さんは「現実に即した理想に向かって努力を」と背中を押し、相談者も「やってみます」と応じて電話を終えました。
娘の怒りが止まらない夜に、母が失っていくもの
長女が「ひどかった」と過去を掘り起こす夜、相談者はただ謝り続けます。
謝ること自体は誠実さでもありますが、何時間も続く叱責の中で、母の心身がすり減っていけば、生活の土台が崩れてしまいます。
土台が崩れると、娘を支える力も失われる。
すると娘はますます不安になり、怒りでつなぎ止めようとする。
そんな循環に入りやすいところが、この相談の切なさでした。
坂井先生が「気にしない」と言ったのは、娘の苦しみを無視しろという意味ではなく、母の呼吸を守れという合図にも聞こえます。
過去の話を受け止める日があってもいい。
けれど毎回、明け方まで付き合うことが“償い”になってしまうと、二人とも前へ進む余力が残りません。
「自分がいなくなった後」を考える前に、「今ここ」を見える形にする
相談者の不安は、八十代の親と五十代前後の子という、いわゆる8050に近い構図とも重なります。
大きな問いは将来ですが、将来の不安は、たいてい「今が見えていない」時ほど膨らみます。
たとえば、家計は年金と夫からの月5万円の補助で回っているといいます。
ここに、固定費がどれだけあり、いざという時に何か月分の蓄えがあるのか。
長女が一人になった場合、支出は減るのか増えるのか。
こうした具体が見えるだけでも、不安の質は変わります。
同じように、生活の手順も見える化できます。
食事、洗濯、掃除、通院、役所の手続き。
いまは母が担っていることを、いきなり“自立”に切り替えるのではなく、段取りを一緒に整え、できた日は静かに積み重ねる。
その方が、長女の強迫症状とも衝突しにくくなります。
“できること”を小さくし、現実に合わせて繰り返す
加藤さんが言った「現実に即した理想」は、ここで効いてきます。
理想を高く掲げると、達成できない自分や娘を責める材料になります。
そうではなく、今日できることを小さく決め、できたら終える。
できなかった日は、原因を責めずに、明日の条件を整える。
日々のリズムが戻るほど、怒りの頻度も変化しやすくなります。
たとえば外出が難しいなら、いきなり仕事の話をしない。
まず医療の継続や、生活圏の中でできる役割から整える。
家の中で担当できる家事を一つ増やすだけでも、「母が倒れたら終わり」という恐怖は薄まります。
母にとっても同じです。
反省は大切ですが、反省が「一生かけて罰を受ける」に変わると、娘は救われません。
母が休む、食べる、眠る。
小さな自己管理が、結果的に娘の安全にもつながります。
家族の“役割”を分け直すという発想
長男が自立しているという事実は、家族全体の支え方を再設計できる余地でもあります。
母と長女の二人だけで抱え込むと、関係が近すぎて感情がぶつかりやすい。
第三者が入るだけで、話題が整理され、責任の位置も整いやすくなります。
また、家という資産をどう扱うかも、感情と別に整理しておくと安心が増します。
誰が住み続けるのか、維持費はどうするのか、名義や相続はどう考えるのか。
答えを急がなくても、論点を言葉にするだけで、夜の叱責が「出口のない怒り」から「現実の課題」へ移りやすくなります。
まとめ:親子の関係を“直す”より、暮らしを整える
今回の相談には、夫婦関係の歪み、親子の期待と投影、そして中高年期の家族の不安が重なっていました。
過去を悔やむ気持ちは自然です。
ただ、悔やみが強いほど「全部私の責任だ」と抱え込み、娘の怒りも「全部親のせいだ」と固まりやすくなります。
坂井先生の線引きは、冷たさではなく、これ以上関係を壊さないための枠にも見えました。
母が世間体から降り、娘の言葉に毎回すべてを差し出さない。
そうして初めて、娘の治療や日々の生活の手順を、少しずつ現実に合わせて整えていけます。
私自身は、親子の会話がうまくいく日を無理に急がなくてもいいと思っています。
今日の暮らしを少し軽くする工夫が、明日の関係を静かに変えていく。
焦りの中にいるときほど、小さな現実に戻っていける道を残しておきたいですね。
放送はこちらから視聴できます
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
人は誰かの悩みや言葉に触れたとき、ふと自分の心が揺れていることに気づくことがあります。
その小さな揺れは、これからの自分を整える大切な“サイン”なのかもしれません。
もし今、胸の奥にそっと抱えている思いがあり、「どこかに話してみようかな」と感じている方がいらっしゃれば、いくつかの相談先をここに置いておきます。
どれが正しいということはありません。
今のあなたに合う形を、静かに選んでいただければ十分です。
◆ テレフォン人生相談に相談してみたい方へ
寄り添って話を聴いてもらいたいとき、人生経験の深い回答者の言葉に触れたいとき──。
テレフォン人生相談は、長い歴史の中で多くの方の迷いを受け止めてきた相談先です。
番組という特性上、相談内容が“広く届けられる形”になることもありますが、その分だけ、そこで得られる言葉には力があります。
◆ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ
テレフォン人生相談のように、限られた時間の中で専門家の言葉を受け取る形が合う方もいれば、
「相談したこと自体が、どこかに伝わってしまうかもしれない」
その不安が先に立って、踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。
このブログでは、そうした気持ちを抱えたままでも選べる、誰にも知られず、心の内をそっと預けられる相談先もまとめています。
無理に利用する必要はありません。
ただ、自分に合う距離感の相談先が他にもあるということを、必要になったときに思い出していただければ十分です。
→ 誰にも知られず、心を預けられる相談先を探しているあなたへ
どの道を選んだとしても、それは “自分を大切にした証” だと思います。
またゆっくりとお会いできますように。
──悟(さとる)


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